燃え上がる夕原の奏で
色を無くした菫の空に
光の筋は走り
雲の紅葉は一瞬間に一年を渡り散る

耳を澄ませて
息を殺し
立ち止まる川野辺
風に恋うる稲海の
潮騒の音

降り積もり
聴こえる
聴こえる聴こえる
蘇える
木霊の繰り返し
数千年の
もはや文字も音も言葉の意味も
問わず
数千年の彼方から
ひとを立ち止まらせる
夕原の

わたしたちは
あなたの美しさを
誰に
誰から
いつ いつのまに
知り
覚え
伝え
いつまでも
瞳を焦がすまで
瞬きすら忘れ

家路を辿る鳥たちも
泳ぐ蜻蛉も
知らないのだとすれば
ひとに
夕焼けを教えたのは……


数瞬は過ぎ
黒々と木立の影の中
赤く瞬く夕日の星

数千年の昔と後に
どうかまた
いつか

ここで


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