昔、昔
ではないようです

いつかの明け方のことでした
もう誰も覚えていないほど
遠い昔の雲の上
人の生み出す言霊を
ばらばらに千切ったかみさまが
どうやらどうにも憂い顔

ついとその手を伸ばすや否や
人々の話す言葉から
誰かを傷つける言霊を
全て取り上げてしまったのです


彼女は私に問いました

「それでみんな幸せになったの?」


私は黙って微笑んで

「とても静かな世界になったよ」


そう言って、眠りにつきました

ある日の夢の話です



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