トンネルの前に立っているようなもので
漆黒の虚無の前で立ち尽くしているようなもので
かつては満開の薔薇の屋根
秘密の花園
賑やかな鳥の歌声に寄り添って
優しい風が踊っていた、
ことも
あったのですが
それともあれは砂漠のバザール
天幕の織り成す人の群れ
香辛料の告白だったでしょうか
もしかしたら
青い青い空の中
雲の身体奥深くへと繋がる道だったかもしれません
イルカの呟きか寝言の夢と

トンネルの前に立っているようなもので
それはいつもいつも
一瞬だけ私の全てを通過して満たして
跡も残さずに立ち去り
気まぐれな西風 渡蝶の羽休め
後にはがらんどうの真っ暗々
呼ぶ声は
幾重にもぶつかり合いながら
はっくりはっくり呑み込まれ
暗闇の視線、
逃れられない兎、

(ハックルベリー! ハックルベリー! お願いだから帰ってきてよ!)

一言だけ呻きたいのは
私の後ろの賑やかな世界よりも
ふとトンネルを来る一瞬の幻に
より鮮やかな より強烈な よりより より 愛しさを増して
酸素と実体が伴っていなければ
伴ってさえいなければ
それすらも、それなのに、

(さあご一緒に 光り輝く少女漫画を開きましょう)

「貴方がいなければ生きていけない!!」






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