まだ幼いこどもだったとき
紋白蝶のさなぎは友だちだった
指先でそうっと撫でてみると
暖かく 柔らかく
生きていることが分かっていても
動かない 眠りのさなぎ
まあるい口で
もくもくもくもく
キャベツを食べていたあおむし、ねえねえ
死んでいるの
眠っているの
身体がぜんぶ溶けちゃうってほんとう?
べつのからだになってしまっても
キャベツの味は、まだ覚えているのかな?
小さな指先に、紋白蝶の鼓動を感じたのかどうか
小さな指先で、さなぎを開きたい衝動に抗えたのかどうか
今の私にはもう思い出せず
紋白蝶のさなぎのことを思い出すのは
全てが
生まれ変わってしまったあと
淡い空の下
ああ
きれいだな
ほら
婚礼式だよ