自分のことを愛せないひとは
人に愛を求めます
干上がった死の川のように
ぽろぽろと崩れゆく心を抱いて
必死に 必死に
叫びます


誰か雨を、
誰か僕にあまやかな雨を


歯軋り
呪いを吐血し
飢えと乾きに身悶えて
掻き毟る大地は
誰のものでもかまわない


誰か水を、
誰か僕にあまやかな水を


愛しい腕を夢に恋い
ねえ どうか 僕を愛してよ
まぶたの裏で呟いて
危うい笑顔を目に乗せて


(ねえ どうか僕を愛してよ)


――自分のことを愛せないひとは
まるで罪人のようなきもちで
全ての愛しい人の笑顔に
心の中ですがりつき
どうかこの渇きを癒してくれと
うずくまっては すすり泣き
闇のけものに呑まれつつ
憎い憎い自分の首に手をかけて
きっと こう ささやくのです


僕は
貴方を
愛しています


と。



inserted by FC2 system