眉を上げながら
「おもしろいね」と言った
僕の隣であの子は
「うん、おもしろい」と言った

少し顔をしかめて
「よくわからないや」と言ったら
あの子も小さな声で
「あー、確かに」と言ってから
知らない言葉を呟くように
「よくわからない」と繰り返した

「でも、きれいだね」と笑った
あの子も綺麗な笑顔で
「うん、きれい」と言った

「なんだこれ」と顔をしかめた
「ほんと、なんなんだろう」とあの子は言った

僕の言葉は腹をたて
「何が面白いんだろうな。全然わからない。なんというか、ちょっと、気持ち悪いし」
見ていたものから目をそらし
隣のあの子を見つめたら
あの子は前を見たままで
「ね、何が面白いんだろうね。気持ち悪いよね」
綺麗な笑顔を浮かべたままの
僕はあの子をじっと見つめた

「ねえ、」
「ん?」

綺麗に笑うあの子の手を
握る気にもなれないで
とつとつ一緒に外に出た
鋭い北風吹きつけて
二人一緒に「寒いっ」と言った

首をすくめて笑うあの子を
ちょっと哀しく眺めながら
僕はあの子の手を取った

「暖かいお茶、飲みに行こうか」
「うん、行こう行こう」
「どこがいい?」
「どこでもいいよ」
「……じゃあ、あのお店にしよう」
「うん、いいね」
「好きなの、頼んでいいから」
「え? うん。そうだなぁ、なににしようかなあ」


柔らかな手をそっと握った
握り返された、ような気がした、
気のせいだったかもしれない



inserted by FC2 system