通りすがりのある日のこと

愛を無くした子供が
傷ついた手のひらで
瞳だけをきっと光らせて
雑踏の中に、凛と
凛と立っていました。

あまりにもその背が儚く伸びていたので
思わず手を伸ばしたら
その子は急に体を強張らせ
瞳を歪めて叫びました


そんな表向きのぬくもりなど
一瞬で無くしてしまうと分かっているのに
瞬きの間の麻酔など
いらない!


獣のような声でした
愛を求めて泣く子供の声でした
その声は
欲しくてたまらないだろう人のぬくもりを
汚れた手で
乾いた大地に
投げ捨てました。




乾いた音を立てて
ぬくもりが割れる音がしました





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