きらきらどろどろカプリッツォ

光闇混沌綺想曲




光と闇の
織り成すこの世界
さあ、駆け降りましょう
どこまでもどこまでも続く
光と闇の絡み合う

螺旋階段


“ 想 ”



影     想
に          の
呑            中
ま              で
れ               命
る               の
夢              祈
を            り
見         を
た      貴
虚  方

笑   闇
顔       を
の          切
夢             裂
を               く
見                 悲
る                  鳴






 
<花篭の小鳥>

鳥かごの中の 小鳥
いつも いつも 鳴いていた
広い空を見上げては
いつも いつも 泣いていた

いつか その声も枯れ果てて
瞳から 心さえ消えてゆく頃に

かごの隙間から ふわり 花の種

気づかないままの 柔らかな綿毛が
微笑んで 歌をうたう
「わたしは、此処だよ」

鳥かごの中の小鳥
もう 寂しくないの
小さなかごの中には
咲き乱れるような
なんて美しい 花畑

歌って 笑って
かごの中の小鳥
あんなに遠かった空も世界も
大丈夫 ずっと此処にあるよ

たとえ空から切り離されても
あなたの育てた 花畑は
いつかかごの柵に寄り添って
撫でるように なんて優しく
硬い鍵さえ 壊してしまうから


あなたの歌を
どうか歌って
咲き乱れる花畑と共に

あなたの笑顔を
どうか歌って
花篭の中の小鳥
<花檻の小鳥>

切り取られた
美しい 美しい
一瞬の世界の中へ
溶けてしまいたいと
ないてる 小鳥

あんなに力強かった翼は
折れて しおれて 枯れ果てて
世界の煌めきに
焼き殺されてしまいそう

歌うことさえ忘れて 忘れて
なくことだけが 最後の言葉

もう なくのにも 疲れちゃったよ
世界を見ることも 何もかも
何かを想う そのことにさえ


心からおちる 涙にとけて
ぼくの心は もうすぐ空っぽ
このまま ずっと ずっと
眠ってしまえたら 良いのにな

世界の全て、何もかも
もう、ぼくには重過ぎて


このまま ずっと ずっと
目が覚めなくて 良いのにな
疲れちゃったんだ、神様
くたくたで へろへろで
心が もう
少しも
動けない

だから 神様
どうか このまま
永く 永く 眠らせて……
 





<白昼悪夢>

――三月三十一日
天候は晴れ時々曇り

風は何処か中途半端で
例年通りの桜の花は
嫌になる程に満開、満開
死体を孕むなんて伝説を持つ
不気味な木の下で
今日もぞろぞろ 人の笑い声
見れば捨てられたごみの山
人の残骸と花の共演
意味も何も無い日々の繰り返し


脇目も振らずに走る
溜息を乗せた通勤快速
季節なんて忘れ去られて
今日もまた、一日の始まり


後ろ指 囁き声
ひそひそ 花盛り
いつものこと。
心に届く声なんて無い
これが私の幸せ

割り切ってしまえば、全ては平穏

大人は大人で 笑いもせずに
今日もひたすら 社会の歯車
子供も子供 同じこと
何時の間にやらご立派に 歯車予備軍
意味を見出せないなんて、言いながら


今日も今日とて
無気力な溜息
繰り返されるだけの、世界
 <白昼夢>

――三月三十一日
天気は晴れ、時々曇り

風は春と冬の間の、優しいそよ風
緩やかな暖かさに目を細めれば
淡い紅を映した桜の花が
昨日とはまた違う色
少しずつ、散り始めていても
誇らしそうに 咲いている
朝から気の早い人たちは
楽しそうに笑いながら
春に花を添えて


眠りを誘って揺れる電車の
切れ切れの風景に浮かぶ
一瞬の 季節の笑顔
昨日とはまた一つ、何かが変わる


ありがとう、と笑顔を見せたら
私に帰って来た笑顔が
とても嬉しくて、嬉しくて
奇跡的な出会いのもとに
皆のくれた言葉と時間
忘れないよ ずっと
いつまでも いつまでも

たとえ道が離れても
苦しい雨が降る時も
その先の未来で
お互いに歩いていこうね
小さな約束を笑顔でそっと


本気の夢なら犠牲なんていらない
代償さえも光に変えて
この世界を歩いていける
 





<Croquis Dream>

夢 という言葉を
描いてみる

あっと言う間に 忘れてしまう
儚い切ないものなのに
時に人の道を照らしたり壊したり
本当に不思議な 忘れ物

おやすみ、良い夢を
おはよう、良い今を
ねえ、君の瞳に
この世界は どんな風に映るの?

覚えているかな
記憶のずっとずっと向こうの
君が 空さえも飛べた世界を

夢の言葉を 君にあげる
何度でも 言ってあげる
大丈夫だよ
ね、大丈夫だから

子供の頃の クレヨン色の夢を
笑って「捨てなよ」と言ったのは誰?

ようこそ
この不思議な世界へ
魔法は確かに使えないけど
心は ちゃんと此処にあるから

どうか 捨てないで
君の中の灯り
どうか 忘れないで

君の見た夢を教えて
その鮮やかな思い出を
儚く消えてしまったとしても
君と一緒に時を刻んだ
心の中の友達のこと
<ある修道女の独白>

かみさま
どうか今すぐに 私から
人に愛される資格を
永遠に取り上げて下さい

いいえ いっそ、
生きる資格すら取り上げて下さい

わたしは罪の子供
愛されてはいけない者
貴方にさえも
愛されてはいけない 人間です

貴方の言葉も己の誓いも
愛しい人の心も 尊き父と母の想いも
何もかも 何もかも
砕いてしまったわたしなんて
愛されて良いはずが ありません

永遠の罰を
弱い心を持つことしか
出来なかったわたしに
どうか永遠の罰を
赦されることのない
永遠の罰を

わたしは汚い人間です
みんなそれを知らないのです
わたしが隠しているからです
なんて醜く汚らわしい人間でしょう
それを吐露する勇気さえ
わたしは持ち合わせていない

全てを愛さず、疑い、阻害し、見下し
自分のことしか心にはなく
自己憐憫と他力本願 怠惰で臆病な心
そんなものに塗れ固まった
醜く汚らわしいわたしを どうか
どうか ―――
 





<真っ赤な茨>

言葉なんて 単純な鎖に縛られてしまった
どしゃ降りの悲鳴が辿り着く

なんて虚無的な戯言の

突き刺さる 突き刺さる
まっくろ海の底 まっしろ雪の原
刻まれた赤い血跡の
馬鹿らしい Mayday message

美しい硝子細工をリノリウムに叩き付け
舞い上がった粉々の雨
いつか夢に見た世界
地平線360°曇天晴天 
何もない 何もない世界で
世界を劈く絶叫だけ木霊する

翼の狭間に指を突き付け
ぎりぎり 爪先 表皮を裂いて
赤い雫 ぼたりぼたり
どうかそのまま堕ちてしまえ
心の底に潜む 闇色の影


心から赤を滴らせて
シンデレラの夢に酔う
その涙を その意味さえも
貴方には答えられますか?


ずたずたに切り裂いて
きらりら光る 玉虫の裏側を抉るように
ほぅら、なんて醜いのかしら!
脈絡もなく 救いもなく
迷い子が泣き叫ぶ 赤い痕

これだけが 救いに
聞こえるの
<ねえ、目を開けてと天使が泣いた>

涙の音が
こぼれて消える
現実に魘される声が
私の中に聞こえる

ねえ、貴方は
私のことを、覚えている?
ずっと想っているの
貴方のことを
ずっと 幸せを祈っているの

羽に包まれた人の魂は
やがて年月と共に
水晶のように罅割れていく
だけどその 屈折した光は
時にとても美しいこと
貴方は知ってる?

私には貴方を
幸せにしてあげることは出来ない
どれだけ懇願されても
私には どうしても無理なこと

貴方を本当に幸せにしてあげられるのは
貴方だけ

幾ら私が花を差し出しても
貴方は悪夢に囚われているから
世界はずっと 真っ暗のまま
甘い香りくらいは 届けられたかな

私は貴方の隣にいるよ
大丈夫だよ 泣いても良いよ
赦せない貴方を ゆるしてあげて
そっと貴方の頬を叩いて 歌うの
悪い夢から少しでも早く
目を覚ませますように
夢の向こうで 待っているから
 





<ありがとうありがとうありがとう>

いつもいつもいつまでも
ずっとずっとどこまでも

真っ暗な思い出さえも
優しく抱きしめて
お陽さまの歌をうたえたら
貴方も 笑ってくれるかな

胸の中の私の世界を
振り返って見れば
随分と曲がりくねった道が
上手に此処まで続いてる
大好きなあの日も 大嫌いなあの日も
ずっと 此処に続いてる

ありがとう
みんな、貴方たちのおかげだよ
私、此処まで歩いてこれた
たった一つの 今という時まで

ひと時の光さえも無い世界なんて
きっと 何処にも無いはずだから

ありがとう ありがとう
大好きな貴方も 大嫌いな貴方も
私の世界の星になる
みんなみんな 光を灯す
私の中の全てを 照らして

ありがとう
大好きだよ
愛してる
愛してる
いつまでも
ありがとう
忘れないよ
ずっと、ずっと
貴方のことも
貴方のことも
<いつまでも>

何も無い 何も無い世界で
真実と嘘の狭間に沈み
貴方は 生きていましたか

どんなに綺麗な言葉を並べても
本当は 疑っているのでしょう?

虚像の幸せに満ち溢れ
死んだらそこで、終わり、おしまい
天国への手荷物は赦されません
「ねぇ、あんた、
こんなんがあんたの幸せなのかい?」

知らないことを語るなら
それは嘘と呼ぶのでしょうか
どれだけ想いを巡らせても、結局は
本物に 敵うはずもなく

薄っぺらな言葉の向こう
だぁれもいない だぁれもいない
もちろん 私だっていない


ひとつ良いことを教えてあげる

君にもう、明日は来ないよ


なんてね


素晴らしく美しい世界
うっかり嗤ってしまうくらいに
私は知らない
貴方も知らない
きっと、だぁれも知らない

世界が終わる日に
貴方は、何を悔やむの?
 





光と闇の降り積もる野原で
歌声に打たれながら
祈りを願う

闇は全てが闇に
光は全てが光に

成れば良いと 望むから


舞い落ちる言葉の中に
光も闇も どうか込めたまま

永遠に 歌の途絶えぬことを
 
 綺麗事の花園の中で
真実の花は 何処へ隠された?

絶望の花園の中で
希望の花は 何処へ隠された?


意味も理由もいらない
どうか歌って
貴方の心を
透明なる想いのうた
もしも 捧げられたなら




彼 方 が そ の 歌 を 望 む の な ら ば

空 へ 降 り 積 も れ  遥 か な 歌 声 の 夢




思い出して

私たちの生きている

この世界のこと




奇跡的な縁の先に居る貴方へ


Fin
….No, song is never end forever.








2008年 文藝部誌「游」 新入生紹介号掲載
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