友情の温度差に快楽を
身体全体を押し包み溶かすような真夏の公園から
クーラーたっぷりみっしりな喫茶店に飛び込んだ時みたいに
温度差は最高さ
生きてゆくには不可欠だね
あなたの愛とわたしの愛が
35度と28度でも
-3度と18度でも
本音を開けっ放しにしちゃあ駄目だよ
二人ともあっさり融けちゃうからね

それでも私は貴方を愛しているのだし
それでも私は君を愛していないのだから





哲学もない
意味もない
理由もない
そんな言葉は
誰にとって必要なのか
私の為か?
貴方の為か?
詩は表出の手段に過ぎず
詩も書きますと言う度に
私は少し顔を歪める

私は決して詩人ではないのだが
書いたものに対して呼び名を持たず
仕方なしに
詩と呼ぶしかないのだけれど
いっそ言い切って
ただの空虚なポエムなのさ





個人と世界の間に
なぜ橋を架けなきゃいけないのか
わたしから遊びを取り上げないで
がらくたを積み上げる自由も
ジオラマを生み出す自由も
どちらもクレヨンには大切なのよ





涙で書かれた詩は幸福と相性が悪いから
幸せであることさえ忘れてしまうほど
幸せな世界へ辿りついた時
もはやどんな言葉を連ねればいいのか
そもそも世界を愛せた時に
言葉なんかが必要なのか
分からない詩人が
きっとたくさんいるんだね





自由になりたいと望む間の輝きと
自由になった後の空白に想いを馳せる
それはきっと恋に似た匂いがする





硬直から逃れる為に
言葉を引っくり返し、価値観を捻くり回し
創り上げてはぶち壊し
起き上がると同時にもんどりうって転がるような
何も決定したくはないのだ
何者にもなりたくはないのだ
打ち寄せる全てから逃亡する手段として
何も宣言したくないのだ
何も断言したくないのだ
全てを曖昧なままに
全てをあるがままに
全てを





無自覚なピエロほど悲惨なものはない
我に返ってしまったが最後
帰る場所は何処にもない





何かをただ美しいと讃えることが
どうしてこんなにも難しいのか

何かをただ哀しいと訴えることが
どうしてこんなにも易しいのか





敬愛なる文庫本の紙面
何万と刷られた同一の文字列を
人差し指でゆっくりと辿る
柔い花弁を愛でるように
ふっ

滑り降ろしては
やがて静かに
息を潜める
インクに張力を呼び戻すのだ
蘇る波紋と
波間に神の輪郭を探し
一列、
一列
指先を押し進める度に
貴方の中へと降りていく

地球上のあらゆる書架に
貴方への入り口を見つけよう
そして必ず会いに行こう
無限に成った貴方を潜り
全ての神の輪郭を解いて
まだ人間だった頃の
貴方に





この言葉だけは貴方に渡さない



inserted by FC2 system