綺麗な言葉を綺麗なだけと
信じる人に
なんて
笑っちゃうけどね
綺麗な言葉の脆さ儚さを見せ付けられた上でなお
目を閉じ
耳を覆い
あるいは
目を見開き
それでも綺麗な言葉の美しさをしんじるひと
そんなひとが
しんじようと震える心が
そんなこころが
つくりあげる
全ての
声が
呼ぶ名前を知っている





たった100年前の世界
たった100年後の世界
マクドナルドもサラリーマンも
スターバックスも保険会社も
ごきげんよう
またどこかで





「私って変わってるんだよねぇ」
って
そりゃあまあ
当然と申しますか
まあ、別に良いんだけど
自嘲するふりして
誇らしげに笑う貴方は可愛いよ
たぶんね
本当に





怒りも憎しみも決して亡くしてはいけない
もしも怒りがなかったら
あなたは誰も愛することは出来ないだろうし
もしも憎しみがなかったら
いや
それは流石に心配要らないね

さて、はて、この方程式で行くと、
ちょっと大変なことになっちゃいそう
誰か外部要因を足して欲しいな、
ねえ、神様?





濁った黄色に沈んだ夜空は
それは貴方だ
光ばかりを追い求め
夢の影を追いやった
濁る夜空
それは貴方だ

(息も絶え絶えの妖精が告げて曰く)





振り返らずに剣を握り
何かを守る人、ただ、ひたすらに、
駆け抜けた後
折れた野の花に
涙を捧ぐ娘
彼は彼女を守りたかった
彼女はただただ悲しかった

哀しむしか能がない?

愛しい弱い娘が
もしも剣を握るなら
荒れた大地は誰が耕そう?
帰る家の暖炉を誰が守ろう?

ああ、だけど
彼がいってしまったら彼女は
彼女がいってしまったら、
彼は?





柔らかな人肌を
優しく撫でて
暖かな鼓動に
鼓膜を寄せて

ひとの
ひとだけの
奥深く
芽吹くもの
言の葉

この弱い指が
届くのならば

冠をつくろうか
お茶をいれようか
花束にしようか
栞をつくろうか……

いつか
泣き疲れて眠る
細く冷たい肩に
一織りの布を
そっと
包み込むように
かける言葉を
探している

細く剥き出しの
迷い子の足首が
毒や棘に
傷ついても
同じ種から
暖かな
一織りの布が

生まれて。





都会の暗がりに捨てられた
細い路地
にんげんの匂い
荒らされた死骸は
故郷の夢を見た
風と太陽の匂い
黒々とした土に
抱きしめられていた
あの頃を

暖かな身体の
黒い鳥
誰を愛して
誰の元へ帰るの





物語のかみさま
言の葉のかみさま
全てを
ただ抱きとめる
広く暖かな胸に
崩れ落ちて

往く場所のない
心音に
ただそっと
微笑みかける
ものがたりのかみさま
最後の祈りは
どうかあなたに

赦しなどいらない
全てを諦めた時代に
全ては在りのままにと
優しく囁いて
瞼をふさいで
眠らせてください

あなたにあいたい
あなたを願ってはいけない
あなたに





暗く狭く
生暖かい風がぬわりと
頬を撫で
鼓動が跳ね
濁流のように流れ込む電車の
その前の
圧縮される暗闇に向けて
幻の私が駆けだす
幾度も
見送る私の前はたちまち
人で溢れ
何の痛みもない幻想に
日常は帰る

おやすみなさい



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