ひきこもるなら田舎にしよう。
隣の家まで一キロメートル
夜になったら真っ暗で
虫の声しか聞こえない
虫の言葉は分からない。
(ふらりと栗の香る風
遠くをゆく電車の音
(たたん たたん たたん たん
ひきこもるなら田舎にしよう。
匂いのしない静寂に
夜空は溢れる天の川
噂話の影もなく
人っ子一人歩かない……
(枯れたすすき野 それは夢
幽霊が手招き 何か呟く
(た たん たたん たたん た
ひきこもるなら田舎にしよう。
粉々にしたテレビを飲み込み
郵便受けに杭を打ったら
家の残骸の上に立ち
電話線を微塵切るのだ
そうすればきっと私は
その時やっと私は
栗の香る東風の中に
人の声を聴き取れるに違いない
(た、い たた い あい、たい あい……
(たん たたん たたん たたん たた……
ああ電車の音
そうか私は死にたいのか
いや
私は眠りたいのだ
ただ静かに