見上げた高い高い空の深いところを
一匹の飛行機が
背鰭を西日にきらきらと光らせて
脇目もふらず
一直線に泳いでいった

淡い三日月の舟が
風の波に揺れていた
光の届かぬ夜の地は
美しく空に透けていた


首が疲れて水底を見る
若い緑の中で躍り狂う
紅を差した鮮やかなつつじが
脇目もふらず咲いていた


もう一度、空を見る
昼と夕の狭間で
淡い橙の差した
広い広い、透明な故郷の空

隠れるものなど何もないのに
銀の魚は、もう何処にもいなかった


三日月の舟
そんなに唇を持ち上げて、
なにをけらけらと、笑っているの?


風の潮騒が
草葉の間に微睡む夜を
くすぐりながら
過ぎてゆく


おはよう
新しい夜






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