蒼く深い深い空の底
眠りの波にたゆたうような
人の吐息がほどけて消えた


遥か彼方の冷たい空の
恐ろしいほど清らかな
遥かな蒼は
透明な蒼は
どうして あんなにも
一人ぼっちで

ひとつの雲も
浮かばない


この空の底に漂う
人の息など泡の夢
ふわりと小さく羽を伸ばして
大気に軌跡を刻んでも
飛び立つ前に

「さようなら」


誰もいない
誰もいないの


その孤高の蒼はあまりにも
悲しそうに
寂しそうに
只 しんと佇みながら
凛と力強い祈りの歌を
音も無く 只 舞い落としていた

まっくらやみな星の海を
清廉な蒼に染め上げて
まっさおな神様の祈りは
星の数にも劣らない
数多の命を包んで抱いて
たった一人輝いていたのに

傷だらけの両手が
細雪の只中で
まっさおな血の光を
纏わせて
空の底の命たちへ
差し伸べられているのを
誰一人として気づかぬままで

北風に織り込まれたかの声は
誰の耳へ届くのでしょう


震えるほどに澄み渡る
命の遥か彼方の向こう
小さな祈りが泣いていたんだ
切り離された風の中
細雪の只中で


深い蒼の底で立ちすくむ
小さくて汚れた私の息は
今も、そう
貴方に、護られている




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