Snow Sugar




“ Merry Christmas ”

砂糖菓子のような 楽しげで甘い言葉が
イルミネーション
魔法の明かりを映して光る 粉雪とワルツを踊る
    
 ニチジョウ            Merry Christmas
冷たい 世界 を置き去りにして クリスマスの魔法
冷たい冬の吐息に 笑みが交わる


“ Snow Sugar, Merry Christmas ”
“ 砂糖雪の舞う今宵、クリスマスの魔法を―― ”


光のカゲで佇む 魔法から外れた世界
Christmas Song
楽しげな歌声を聴きながら 少女は寂しげに微笑んだ
夜空から舞い降りるSnow Sugar 少女の瞳から零れるのは
 Tear&Snow
刹那の滞空―― … ワルツを踊りながら―― …

魔法から外れた 只の雪降る孤独な夜に
少女は一人肩を抱く 楽しげなChristmas Song 私には届かない…


“ Merry Christmas ”


うずくまる少女に差し伸べられる楽しげな歌声
それさえも跳ね付けて、自らを抱きしめる

砂糖雪の舞う聖夜
少女の手のひらは凍え赤く震えて…


「メリー・クリスマス!」


―― 彼女を救うのは誰?


少女のうずくまるモミの木の下
ふいに現れた笑顔は
戸惑う少女の凍えた手を掴み 柔らかに微笑んだ

「魔法の夜 絆と奇跡の聖なる夜
 今宵に涙は似合わないよ さあおいで 一緒に踊ろう――」



砂糖雪 Snow Sugar

ひらひらと舞い降りる白銀の結晶を肩に乗せて
その少年は微笑んだ

闇の中で泣いていた少女には その微笑は眩しすぎて
自らを閉じ込め、自らを匿い、自らを抱きしめていた闇の中へと
少女は目を閉じて走り出す……


“ この魔法の夜に ”
       “ 一人にならないで。 ”

      
ニ ゲ コ ン ダ
暗闇へと追い込まれた少女
走り去ろうとするその身体をその手を半ば無理矢理に掴み留めて
                          
 ナミダ
少年は、驚き振り返った少女の瞳から零れる雪をぬぐった
優しくその手を握り、暖かく微笑む

泣いている事にも気づかなかったの?

   Merry Christmas
“ 陽気なクリスマス ”
この魔法の夜 君は一人じゃない
さあおいで ワルツを踊ろう?

暗闇にうずくまっていた少女の手を取り 少年は空へと舞い上がる……


Snow Sugar Dance 藍と白のコントラスト

Holy Night Dance 地上の星と空の流れ星

Merry Christmas

Tonight is Magical night…

      
 ゲンジツ
ただ冷たい 冬 に立ち向かい
暖かい光からは目を逸らし続けるの?

      
 ニチジョウ
この冷たい 世界 でも 暗闇に うずくまらないで
       
セカイ
顔を上げて 前を見てご覧?

光はほら 今もまだ、 …ちゃんと、ここにあるよ

Merry Christmas―― ……







― Brown Nose ―


真っ赤なお鼻のReindeer
彼女はいつも一人ぼっちで泣いていたけれど
僕はそれをいつも見ているだけだったんだ―― …


彼女に 冷たい雪のように舞い降りる嗤い声
                                     “ ねえ ”
Cold Snow, Cold Snow
                                  “ 誰か助けて ”
―― 彼女に手を伸ばすのは誰?


冷たいユキは暖かいユキにはなれない
溶けないで暖かいユキになるには 僕はどうすれば――

擦れ違う Reindeersの思い
雪は 花びらにはなれないのでしょうか――



“ 私は一人ぼっち ”

“ おいで 君は一人じゃない 私たちと同じなのだから… ”



……真っ赤なお鼻のReindeer
唯一の大好きな人
Santa Claus に手を引かれ
一人ぼっちじゃなくなった少女は 笑みを浮かべてソリを引く
先頭に立ち 冷たい冬空を駆ける 少女の瞳は凛として誇らしく……

“ Merry Christmas …… ”


Reindeersは知った 
嗤いは消えて、 …そしてやがて笑いは産まれるだろう

真っ赤なお鼻も 茶色なお鼻も                       “ 暖かい雪の笑顔 ”

彼女と僕は同じReindeer                        “ 彼と私は同じReindeer ”
輝いている彼女はきっと
僕の事など知らないだろう
僕は一人のReindeerに過ぎないから         私は一人のReindeerに過ぎないから ”

でも 僕は 一人のReindeer                  “ そう 私は 一人のReindeer ”

彼女の後ろでソリを引くよ
この魂も思いも 一つだけでしかないのなら      “ Only One 代わりの無いもの… ”

Brown Noseのトナカイは Red Noseと空を行く
冷たい雪は 空で交わり
冷たいまま――しかし、暖かい 笑顔を招くだろう……







― Twinkle Bell ―


Magical Snow Night
Merry Christmas ……


冷たい冬の空が 暖かくなるように
一欠片の希望をかけて 夜空へと目を向ける

Santa Clausの鳴らす Jingle Bellは聞こえない
小さな頃は 確かに聞こえていたのに――


藍色の夜空から やがて舞い降り来るSnow Sugar
ほんの僅かに輝きながら 地上と空のイルミネーション

その明かりは この冷たく凍えた世界で
それでも消えずに光っている
    
キボウ
確かなWishの夢明かり…


小さな頃信じてた Jingle Bellは見えないけど
その代わりに聞こえるよ Twinkle Bell
            
大好きな人
私に笑いかける Santa Claus ……


少女は微笑む 少年は手を差し出す …… Snow Magic …

Reindeerは空を駆ける その跡に光る星屑は …… Snow Sugar …


Merry Christmas

     
ゲンジツ
「冷たい冬の夜 でも 私は光を信じたい……」


空っぽの靴下
光を失ったクリスマスツリー
願いごとを書いた手紙は 冬の空へは届かないまま

小さい頃信じてた サンタクロースは見えない

だけどいつしか
その代わりのように
耳に届いた 暖かい調べは……

“ あなたの微笑みの音は まるでソリの鈴のようで”
    “私に笑顔を 贈ってくれる……”

小さな頃信じてた サンタクロースはもう見えないけれど
だけど届いて Twinkle Bell

大切な貴方へ


「メリー・クリスマス」


奇跡という名のPresentをあげるよ…

                  
 ささやかな 幸せ
冷たい冬空の下 舞い降りる Sugar Snow
溶けないように受け止めて その手のひらに握り締めた


Merry Christmas
      
シアワセ
ささやかな奇跡が 貴方へと届きますように……



Fin




2006年 文藝部誌「游」 クリスマススペシャル号掲載


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